生活
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枕飯と枕団子の違いとセットの意味
枕飾りの際、枕団子と必ずセットで供えられるのが「枕飯(まくらめし・一膳飯)」ですが、どちらも故人のための食事であることに変わりはないものの、その役割や意味合いには微妙な違いがあります。枕飯は、故人が生前使っていた茶碗に、炊きたてのご飯を山盛りにし、真ん中に箸を二本垂直に立てたものであり、これは「この世での最後の食事」を意味すると同時に、箸を立てることで「もうこの世では食事をしない(日常とは違う)」という逆さ事(さかさごと)の表現でもあります。一方、枕団子は先述の通り「あの世への旅路のお弁当」であり、移動中の携帯食としての役割が強いため、枕飯が「家での別れ」、枕団子が「旅立ちの準備」という時系列的なニュアンスを含んでいるとも解釈できます。この二つをセットで供えることは、定住(生)から移動(死・旅)への移行を象徴しており、遺族が故人の死を受け入れ、送り出す覚悟を決めるための儀式的な装置として機能しています。また、枕飯は通常、一度供えたら出棺までそのままにしておく(干からびても下げない)ことが多いのに対し、枕団子は作り替えたり、数を変えたりすることがあるのも違いの一つであり、これは団子が「通貨」や「捧げ物」としての性格も帯びているためかもしれません。最近では、パックご飯をそのまま供えたり、市販の団子を買ってきたりすることも増えていますが、本来は「同じ釜の飯」を炊き、その一部を故人に供え、残りを遺族が食べることで、最後の食事を共にするという精神的な結びつきが重視されていたことを忘れてはなりません。枕飯と枕団子、この白く静かな二つの供物は、言葉を発することのない故人に対して、「お腹いっぱい食べてね」「気をつけて行ってね」と語りかける、遺族の愛のメッセージそのものなのです。